自治体の空き家対策実態調査を実施しました

新設「管理不全空家等」の勧告実績はわずか6%、基準策定に苦慮
過半数の自治体において予算や人員が不足している実態
~公平性を担保した制度設計の支援と官民連携によるリソース不足解消が鍵~

 全国空き家対策コンソーシアムの代表理事企業である株式会社クラッソーネ(愛知県名古屋市、代表取締役:川口 哲平、以下「クラッソーネ」)が、空き家対策業務に従事する183自治体に対して、空き家対策業務の実態調査を実施いたしました。

調査結果サマリー

 総務省発表「令和5年住宅・土地統計調査」(※1)によると、全国の空き家数は900万件と、空き家問題は社会課題となっており、空き家対策を強化するために、2023年12月に「空家等対策の推進に関する特別措置法(※1)」の改正が施行されました。しかし、法改正において新設された「管理不全空家等(※2)」の認定等、新しい制度の活用があまり進んでいないという自治体からの声があり、実態調査を実施しました。本調査では、空き家対策の現状において、制度運用とリソース面における課題が浮き彫りとなりました。

 まず、新設された「管理不全空家等」の認定や判断基準については、勧告実績が全体の6%にとどまり、2015年より制定されていた「特定空き家等(※3)」への勧告についても半数以上が実績なしということが明らかになりました。「管理不全空き家等」については、認定基準について半数以上の自治体がいまだ定めていないことが大きな要因となっています。また、特に人口規模の小さい自治体で対応が進んでいない現状が明らかになりました。これらの状況から、新制度運用に向けた対応基準の策定支援や、人口規模による格差是正のため、小規模自治体に対する支援強化が必要であることがうかがえます。

 予算や人員体制の面では、空き家対策に必要なリソースに関して54%の自治体が不満を抱いており、十分な体制整備がなされていないことがわかりました。また、前年度と比較し予算が増加したと回答した自治体は28.4%にとどまり、各自治体における空き家対策の推進が求められている中、限られた資源での対応が続いています。予算や人員といったリソース不足の課題に対しては、予算・人員の戦略的配分と優先順位付けの支援や、民間事業者との連携によってリソース不足を補う取り組みが重要だと考えられます。

 本調査を受け、全国空き家対策コンソーシアムでは基礎自治体における空き家対策業務の支援に繋がるガイドライン整理と共有、また民間企業との連携の支援を行ってまいります。

主な調査結果

<特定空家等・管理不全空家等の指定について>

1)空き家対策特別措置法の改正により新設された「管理不全空家等」について、施行から1年以上経過するも勧告の実績はわずか6%


 「『管理不全空家等』(特定空き家等を除く)として、勧告をなされた実績はありますか。」という質問に対し、「ある」と回答したのはわずか6%にとどまる結果に。「改正空き家法で『管理不全空家等』が新たに定義されましたが、『管理不全空家等』の認定・判断基準を定めていますか。」という質問に対し、「定めた」と回答した自治体が3割強(33.9%)となっており、認定・判断基準の策定ができている自治体は約3割にとどまっていることが、勧告が進んでいない大きな原因だと考えられます。

2)2015年に「特定空家等」が定められてから約10年経つが、勧告の実績は半数以下にとどまる

 「特定空家等の勧告をなされた実績はありますか。」という質問に対し、「ある」と回答した自治体が約4割(42.1%)、「ない」と回答したのが6割弱(56.3%)となり、危険空き家の解決に向けて制定された「特定空家等」の勧告実績は半数以下という結果に。

<空き家対策に関するリソースについて>

3)過半数の自治体が空き家対策に割り当てられた予算や人員に対して不満を抱えている

 「空き家対策に割り当てた予算や人員数に満足していますか。」という質問に対し、「満足」「やや満足」と回答した自治体が1割以下(5.5%)、「不満」「やや不満」と回答した自治体が5割強(54.6%)、「どちらともいえない」が4割(39.9%)となり、空き家対策に関するリソースについて不満を抱える自治体が多い実態が明らかに。

4)前年度と比較し、空き家対策に関する予算増は3割弱にとどまる

 「前年度と比べ、本年度の空き家対策全般かかる予算は増加しましたか。」という質問に対し、「増えた」と回答した自治体が約3割(28.4%)、「どちらともいえない」が5割強(55.7%)、「減った」が2割弱(15.8%)であり、各自治体における空き家対策の取り組み推進が求められている中で、予算増となった自治体は3割弱という結果に。

調査結果詳細

<特定空家等・管理不全空家等の指定について>

1)空き家対策特別措置法の改正により新設された「管理不全空家等」について、施行から1年以上経過するも勧告の実績はわずか6%


 「『管理不全空家等』(特定空き家等を除く)として、勧告をなされた実績はありますか。(Q1)」という質問に対し、「ある」と回答したのは11自治体(6.0%)、「ない」と回答したのが169自治体(92.3%)、「わからない」が3自治体(1.6%)という結果となり、新制度の活用が進んでいないことが分かります。

(小数第二位以下を四捨五入して記載しているため、合計100%となっていません)

 「改正空き家法で『管理不全空家等』が新たに定義されましたが、『管理不全空家等』の認定・判断基準を定めていますか。(Q2)」という質問に対し、「定めた」と回答したのが62自治体(33.9%)、「定めていない」と回答したのが105自治体(57.4%)、その他「分からない」「準備中」等の回答が16自治体(8.7%)となっており、「管理不全空家等」新設から1年経過するも、認定・判断基準の策定ができている自治体は約3割にとどまり、全国的にまだ過渡期にあることが分かりました。基準の制定が進んでいないことが、勧告の実績が少ない大きな要因だと考えられます。

 基準策定が進まない理由としては、「県のガイドラインが整備されていない」といった声や、「課税部局との調整が整っていない」といった、管理不全空家等の勧告に伴う固定資産税の減免措置解除に伴う他部署連携の難しさが挙がりました。


 実施自治体における基準策定・他部署連携の実績共有や、自治体の規模、空き家数・空き家率の状況等に合わせたガイドラインの策定支援を行うことが、制度活用の後押しになると考えられます。

2)2015年に「特定空家等」が定められてから約10年経つが、勧告の実績は半数以下にとどまる

 「特定空家等の勧告をなされた実績はありますか。(Q3)」という質問に対し、「ある」と回答したのが77自治体(42.1%)、「ない」と回答したのが103自治体(56.3%)、「わからない」と回答したのが3自治体(1.6%)となり、「特定空家等」の勧告実績は制定から10年ほどたっても半数に満たない状況であることが分かりました。

 また、Q3の特定空家等の勧告実績の有無に関する内容について、自治体の人口規模ごとに回答の割合を見てみると、自治体の規模が小さいほど勧告の実績がない割合が高いことが分かります。(グラフ1参照)人口規模が小さいほど、住宅数・住宅密度が小さいことで対象となる空き家が少ないことや、空き家対策を他の業務と兼務している等、対応できる人的リソースが少ないことが考えられ、自治体の人口規模や空き家対策担当の体制に沿った支援が求められます。

<空き家対策に関するリソースについて>

3)過半数の自治体が空き家対策に割り当てられた予算や人員に対して不満を抱えている

 「空き家対策に割り当てた予算や人員数に満足していますか。(Q4)」という質問に対し、「満足」「やや満足」と回答したのが10自治体(5.5%)、「不満」「やや不満」と回答したのが100自治体(54.6%)、「どちらともいえない」が73自治体(39.9%)となり、空き家対策に関するリソースについて不満を抱える自治体が多い結果となりました。

 2023年12月の空き家対策特別措置法の改正において「空家等管理活用支援法人」制度が創設され、民間法人を支援法人として指定し、空き家所有者への情報提供支援や活用支援等を受けることができるようになりました。人的リソースの課題解決に関しては、こうした制度の活用や、連携協定の締結等を通じて、官民連携による取り組みが重要だと考えられます。

4)前年度と比較し、空き家対策に関する予算増は3割弱にとどまる

 「前年度と比べ、本年度の空き家対策全般かかる予算は増加しましたか。(Q5)」という質問に対し、「増えた」と回答したのが52自治体(28.4%)、「どちらともいえない」が102自治体(55.7%)、「減った」が29自治体(15.8%)であり、各自治体における空き家対策の取り組み推進が求められている中で、予算増となった自治体は3割弱にとどまる結果となりました。

 限られた予算の中で対策を実施するためには、戦略的予算配分と実施事項の優先順位付けが必要であり、成功事例をもとにした対策方針の支援が求められると考えられます。また、国や県からの空き家対策に関連した補助金・助成金の増額を望む声も挙がっています。

調査概要

調査方法:インターネットによる調査
調査期間:2025年5月1日~2025年5月19日
調査対象:全国の自治体のうち183自治体

全国空き家対策コンソーシアム 概要

代表理事:株式会社クラッソーネ 代表取締役CEO 川口 哲平
事務局 :株式会社AGE technologies、株式会社クラッソーネ、株式会社リノバンク
URL  :https://www.j-akiya.jp
設立目的:全国共通の課題である空き家の増加抑制、また空き家問題に向き合うESG経営の体現、CSR活動の推進

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