【代表理事 対談インタビュー】市原市 小出市長が語る、空き家問題解決に向けた公民連携の重要性
全国空き家対策コンソーシアムは、空き家問題の解決に向け、産学官連携による取り組みを進めています。
現在は4自治体からも、コンソーシアムに賛同を頂いている状況です。
今回は代表理事の川口が、賛同自治体である市原市の市長 小出譲治 氏に、空き家に対する課題感や、今後の対策に向けてのご意見をお伺いしました。
【市原市での空き家の課題と取り組み】
まず、市原市の空き家の状況を教えていただけますか?
小出市長:
市原市は広域がゆえに市街地から農地の多い地域まで、いろいろな顔を持っているところが特徴です。
JR周辺を中心とする市街地については、利便性の高い地域になっていますから、たとえそこで空き家が発生しても、早い段階であればあるほど流通の可能性は高くなります。
中心市街地から離れたところには、戸建て住宅で構成された企業団地があるのですが、高齢化や人口減少により空き家が増加しています。
団地ができた頃は、働く世代とそのお子さんが多く住まわれていたのですが、数十年経って、住民の高齢化や、進学や就職をきっかけに市外に出て行ってしまうことをきっかけに、使わなくなる住まいが増えています。
通勤通学のために交通機関が満足にあったものが、利用者が減ったために減便される、そうなると利便性がより悪くなります。
そこで新しく空き家が発生すると流通性もより低くなり、悪循環に繋がっているんですよね。
川口:
なるほど、空き家が空き家を呼ぶ状況にあるということですね。
小出市長:
そういった中で、特に若い方は利便性がそこそこ高く安価な住宅を求めています。
人口減少する中で、市民の皆さんに住みよい環境を提供することを考えると、駅の近くや市内のいくつかの拠点に絞って、交通機関も含めて整備し、そこを中心とするコンパクトシティ化を進める必要があるのではと考えています。
そして、空き家をリノベーションして活用することによって、利便性が良く安価な住宅を提供し、若い世代が移り住めるようにしていく流れが作れると。
川口:
駅前やいくつかの拠点を中心としたコンパクトシティ化は、人口が減少していく中でのまちづくりとして重要なポイントとなりそうですね。
市原市では空き家への対策として、常に様々な取り組みをされていらっしゃると思います。
活用であり、除却であり、いろいろな文脈でされてるかと思いますが、
具体的な取り組みを教えていただけますか。
小出市長:
空き家の活用については、空き家バンクを運用しています。
千葉県宅地建物取引業協会市原支部と連携をすることによって、情報共有をしながら流通にのせられるものは市場に出しています。
放置されて特定空家等のような危険な状態になってしまった空き家については、近隣住民の住環境を悪化させるため、この3年間で3件の行政代執行等を行いました。
空き家にさせない、そして空き家の解消を進める為には、
空き家所有者の皆さんへ、自分の都合で空き家にしていることが、周辺にどれだけ迷惑をかけるかという自覚を促すことが必要だと思っています。
ただ空き家の活用や除却をするにしても、空き家それぞれに諸事情がありますから、その背景をある程度パターン化した中で、それぞれにどういう方法をとることによって課題が解決できるかということを整理していく必要があるだろうと思います。
空き家が放置されていることを、ただ悪として捉えるというよりも、早い段階から市民や空き家所有者との対話をすることによって、危険な状態に至らないように取り組みを進めていくことが、今、我々に課せられた一番の課題であると感じています。
川口:
なるべく早い手前の段階で所有者様に危機感を持っていただき、意思決定をしていただくというところが重要ですね
【公民連携における自治体の課題とコンソーシアムへの期待】
小出市長:
ただ空き家の発生予防や解決について行動に移ろうとしたときに、やっぱり行政の力だけでは限度があるということも事実です。
空き家対策を進める上での自治体の課題を具体的に教えていただけますか?
小出市長:
量的な課題と質的な課題があります。
量的な課題としては、空き家が増え続けている状況の中で、それを全て解決していくためのマンパワーを確保することが難しいということです。
職員定数は条例で決まっている関係もあり、空き家対策のためだけに一気に人を増やすことはできません。
質的な課題としては、職員の知識、今までの経験の中で解決できるかという部分です。
空き家所有者の皆さんは、相続・売却・解体など、様々な対応を検討されていますが、専門性があるものに関しては、どうしても行政でアドバイスを完結させることは難しいです。
行政としてやるべきこと、民間に任せることを整理して、お互いがやれることを一生懸命やることによって課題が解決できると、そういう方向に進んでいきたいなと思って、今回、いち早くこのコンソーシアムに賛同をさせていただきました。
行政の皆様のお話を伺っていると、民間企業や民間団体と連携することにハードルを感じているという声を多く頂くのですが…
小出市長:
市原市では、私が市長になってから公民連携に力を入れてきました。
公民連携の経験を積む中で、職員も民間との連携に慣れ始めているという状況があり、民間との連携を通して課題解決をすることに抵抗感がなくなってきているんだと思うんです。
我々行政の存在意義は、市民の皆さんがいかに安心して安全に暮らせるような行政サービスを提供できるかだと考えると、その実現の為に様々な策を講じる必要があります。
公民連携は、行政だけだと難しい課題の解決策を講じることができることが一番の強みだと思います。
少し柔軟に、今までの行政のあり方が当たり前だと考えるのではなく、行政と民間の強みを生かし合うことができると、スピード感を持った課題解決ができるかなと思います。
川口:
我々民間としても同様に、一企業が自己利益だけで頑張って伸ばすっていう時代はもう終わってるんじゃないかなと思っています。
これから様々な社会課題が出てくる中で、どうやって公益性の観点で解決していくのかが重要だと考えています。
行政・民間で連携した取り組みにより市民やお客様のお役に立つことができれば、行政としての役割を果たせ、企業は利益を上げることができ、その先に社会課題の解決が実現される。
それを、一企業だけじゃなく様々な会社様と一緒にやっていこうというのが、このコンソーシアムですので、ぜひ期待にお答えしていきたいなと思っています。
小出市長:
もう都市間でも競争する時代ではないと思っています。
全国各地の自治体で同じような課題認識を持っている中で、どこかが先んじて取り組みを進めて成功事例を作ることが非常に大事だと思うんです。
市原市としては、自治体の規模的にも人口30万人弱であって、日本の縮図と言われるような様々な顔を持っており、空き家に対しても幅広く課題があるからこそ、
コンソーシアムの中で、課題解決の成功事例を具現化していくということが、ひいては、同じ状況にある自治体の課題解決にも繋がっていく、その一助になれたらいいなと思っています。
川口:
力強いコメントをありがとうございます。
これからご一緒に良い取り組みを進めていけたらと思っております。
改めて、本日はお忙しい中ありがとうございました。
★市原市長の語る 公民連携のPOINT★
・自治体には、課題解決を行うマンパワーが足りない量的な課題と、空き家に起因する様々な分野への専門性が高くない質的な課題がある
・公民連携により、行政だけでは難しい施策を実施できることで、課題解決に繋げることができる
・公民連携の実施に向けては、行政の意義である「市民がいかに安心安全に暮らせる行政サービスを提供できるか」を意識し、柔軟な行政の在り方を考えてみるとよいのではないか
市原市長 小出譲治 氏 プロフィール
千葉県市原市青柳生まれ。昭和58年に小出運輸有限会社(現コイデ陸運株式会社)に入社し、平成7年より代表取締役を務める。同年に、東京湾岸交通株式会社を設立。平成15年に市原市議会議員当選し3期務めたのち、平成27年より市原市長に就任。現在3期目。